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6日間レース - トラックレースの華

6日間レース - トラックレースの華

※この記事はFFWD本国サイトに掲載された記事を翻訳、加筆、修正したものです。

サイクリングとひと口に言っても、その形態は多岐にわたります。トラック競技もそのうちの一つ。そしてトラック競技というカテゴリーの中に、さらに細分化された種目があります。6日間レースでは様々な種目のレースの上に、エンターテインメント要素も追加されます。

その名のとおり、このイベントは6日間、正確には6晩かけて行われます。2人1組のチームが、各種目でポイントやラップを重ね、全日程での総合優勝を目指します。

6日間レースの起源は古く、最初期のレースは19世紀末には開催されていました。イギリスで始まったものがアメリカへ渡り、その後ドイツ、ベルギー、フランス、オランダでも開催されるようになります。

The cycling track of Ghent

ヘント6日間レース(ベルギー)

それらのレースのうちのひとつ、6日間レースの中でも最も象徴的な「ヘント6日間レース」は、1922年の初開催から今年(2022年)で100年を数えます。

1周166.67mしかないヘントのバンク(トラック競技場)は、桶(おけ)を意味する「キュイプケ」の名で知られています。数あるバンクの中でも最短で、最も見応えのあるコースとして人気があります。

ロッテルダム6日間レース(オランダ)

ロッテルダムの6日間レースも人気レースの一例です。初開催は1936年ですが、毎年開催されていたわけではなく、2005年に毎年開催のイベントとしてリバイバルされました。テニスなどのスポーツや音楽イベントの会場としても有名なアホイ・ロッテルダムには、この6日間レースのたびに特設バンクが建設されます。他の週には世界のメジャーアーティストがパフォーマンスを披露する会場を、選手たちがグルグルと駆け巡ります。

豆知識

レースを6日間おこなうこと自体は、そんなに珍しいことではありません。 ただ、選手にとっては、走る時間帯が大きく異なります。なんと、メインレースは夜8時から深夜1時にかけて開催されるんです!

12組のペアが、個人種目も間に挟みながら、全種目に参戦します。例えば、デルニーレース(モペッドをペーサーにしたハイスピードレース)はペアのうち片方だけが参戦する、など。選手たちは一晩にトータル約145kmを走るので、6日間では870kmを走る計算になります。

24名もの選手が同時に走り、最高時速は70km/hにもおよぶため簡単なレースではありません。小さなバンクを埋め尽くすトラックバイクには、ブレーキもついていないので、選手たちには特殊なスキルも求められます。だからこそ、ロード選手であっても、優れたトラック競技者になれるとは言い切れないのです。

 選手にとっては過酷なレースですが、観戦者にとってはそれこそが醍醐味です。何が起きていて、誰がリードしているのか、特にラップを奪う(他ペアを周回遅れにする)ときには、目が離せません。

Popular Track Wheels

機材

 一晩の間にも様々な種目が争われる競技なので、機材も種目に合わせて用意する必要があります。ホイールとギアは特に重要で、種目ごとに最適な組み合わせが存在します。

タイムトライアルやデルニーレースでは、リアにディスク、フロントにディープリムのホイールを組み合わせます。通常、スプリント系の種目ではFIVE-Tをフロントに組み合わせるものですが、6日間レースの短いバンクではあまり好まれません。マディソンのような集団で行われる種目では、全ての選手が、速度の維持が容易で剛性も高く、コントロール性に優れたディープリムのホイールを前後ともに選んでいます。

次々と異なる種目がおこなわれるので、複数のバイクを用意します。それぞれのバイクにはその日の種目に合わせたホイールとギアが装着されています。各チームにはバイク、ギア、ホイールの準備をするメカニックがいて、時には試合の合間にタイヤを貼り替えることもあります。

ちょっと過去を振り返って、2012年のヘント6日間レースの動画を見てみましょう。イベントの雰囲気がうまく捉えられています。

 

ありがとう、イルヨ

2022年のヘント6日間レースは、過去数十年のレジェンドとも言える選手の最後のレースでもあります。地元ヘントのヒーロー、イルヨ・カイセはこの6日間レースで引退することを表明しています。今回で18回目となる出場を果たし、ここまでに7勝をあげています。

6日間レースにはたくさんの良い思い出が詰まっていますが、イルヨのサポートをしてきたこともその一つです。2010年、チーム・クイックステップへのスポンサー契約にはじまり、その後数年間、彼の6日間レースへの挑戦と成功を支えられたことは我々の誇りです。

イルヨだけではなく、ファストフォワードは6日間レースで好成績を納めています。多くの選手が、我々のホイールから自信を得て(Get Confident)、速く走る(Go Fast)ことに成功しています。