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「丈夫で長持ち」という価値

「丈夫で長持ち」という価値

「道具は使ってなんぼ」なんて言ったりしますが、自転車乗りにとってはホイールも道具の一つです。日常的に使う道具なら、走行性能や品質はもとより、耐久性やメンテナンス性も重要な性能となります。

ホイールのスペックを比較するとき、真っ先に見るのが「重量」というあなた! スペック表には現れにくい「丈夫で長持ち」という性能についても目を向けてみましょう。

ホイール耐久性の決定因子

ホイールの耐久性を左右する要因について構成部品別に見ていきましょう。

リム

車輪の外周部に位置して、走りの性格を大きく左右する最重要部品がリム。加速や巡航速度の維持などに関わる重量や、空気抵抗を決めるリム高や断面形状など、気にすべき性能がギュッと詰まっているのがこの部分です。

「丈夫で長持ち」という部分にフォーカスすると、リム剛性とリム強度が気になります。剛性は荷重に対するたわみにくさを表しており、剛性が高い=固いという意味になります。壊れにくさを表す強度と混同されやすいですが、強度が「どこまで荷重をかけると元に戻らなくなるか」や「破断するか」を表しているのに対し、剛性は「荷重を抜けば元に戻る範囲で、どれだけ変形しにくいか」を表しています。

リムが変形しにくくなると、車輪にかかる荷重を広範囲に分散させることができます。リムが広い範囲に応力を分散させるということは、1本1本のスポークにかかる荷重も小さくなるということで、リム自体の耐久性だけではなく、スポークやニップル、リムやハブのスポーク接合部への負担も小さくなり、ホイール全体としても耐久性を向上させます。

カーボンレイアップ(カーボンシートの積層計画)も重要です。どんな性質の繊維を選び、どのように積層するかで、同じように見えるリムも大きく性能が変わってしまうからです。FFWDのロード用ホイールは、全てライトなグラベルライドにも対応する強度で設計しています(シクロクロスやビーチレースが盛んで、体格的にも大柄なオランダ人の考える“ライト”は、日本人の感覚からすればかなりガチです)。グラベル専用のDRIFTなら、荷物を積んだ激しいライディングにもド安心ということになります。さらに、FFWDではリムのスポーク穴の周りだけを狙って補強を施すことで、リム全体の重量増を抑えながら、強度と耐久性を確保しています。

ハブ

車輪の中心部で回転性能を担い、ホイールと車体とを繋ぐ重要部品です。リムに向かって放射状に伸びるスポークの起点にもなっていて、小学生の頃に習った「ハブ空港」のハブはまさにここから来ています。マングースのことは一旦、忘れてください。

「丈夫で長持ち」という文脈では、まずベアリングに目が行きますよね。車軸にかかる荷重を受け止め、回転の滑らかさを司るのがベアリングです。近年のハイエンドホイールでは、それらの性能に優れたセラミックベアリングを採用するメーカーが多くなっており、FFWDでもRAWというモデルにはSINCセラミックベアリングを使用しています。セラミックには硬く、腐食に強いという特徴があり、滑らかな回転性能と耐久性のために利点が多いのは確かです。

ただ、ベアリングの回転性能を引き出し、その性能を長持ちさせるには、単純にセラミックにすれば良いということでもありません。手に持って空転させたときに、永遠に回り続けそうなホイールは、確かに購買意欲をかき立てます。でも実際のホイールは、自転車に装着して使う道具であり、手に持っている状態では再現できない負荷が発生しています。

FFWDが多くのモデルで採用するDT SWISSのハブは、玉あたり(ベアリングの滑らかさ調整)の外部調整機構がない代わりに、ベアリングに最適なプリロード(予荷)が工場出荷段階でかけられています。プリロードによって、軸が左右のベアリングの間で突っ張っているような力が働いているため、車輪を外した状態では回転がやや重く感じられますが、車体に装着され、固定具によって軸が圧縮方向に荷重されると、ベアリングにかかっていたプリロードが解放されて、ベストな回転性能になるようにできています。

次に注目して欲しいのは、フリー機構です。チェーンを介して後輪に力を伝え、足を止めればジーっとなるアレのことです。一般的な3ポールのシステム(3は“さん”ではなく、スリーと読みましょう。)では、どんなに細かい歯数設定でも動力を伝える“爪”は3点でしか接しておらず、大きなトルクを伝えるにはやや心許ないイメージです。FFWDホイールに採用されるラチェットシステムはその点、全ての歯が同時に噛み合う設計なので、力の伝達効率に優れ、歯にかかる応力も分散されるため、耐久性向上に一役買っています。

スポーク

ハブとリムの間にある金属線がスポークです。ホイールは、このスポークに張力をかけることによって構造体としての強度を保っています。FFWDでは高精度、ハイクオリティーで定評のあるDT SwissまたはSapim製スポークを採用し、モデルによってエアロ効果のある扁平スポークと、強度と軽さのバランスに優れたバテッドスポーク(中央部を細く加工したスポーク)を使い分けていますが、全てのモデルにおいて、力の伝達効率に優れたストレートプルスポークを採用しています(くび部分に曲げを施した一般的なJベンドスポークに対し、ストレートプルは文字どおりハブとリムを一定の角度で一直線につなぎます)。

スポークは太いほど引っ張り強度が増しますが、重たくなってしまいます。また、端から端まで同じ太さのプレーンスポークは弾力性に乏しく、リムやハブとの接合部に応力が集中しやすいため、金属疲労が起きやすくなってしまいます。中間部分を細く鍛造したバテッドスポークは、負荷のかかる両端を太く残したまま軽量化できるだけでなく、細い部分が適度な弾力性を発揮するため、両端にかかる負荷を軽減することができ、耐久性を高める効果もあります(エアロスポークはバテッドスポークにさらに一手間加えて扁平にしているので、同様の効果が得られます)。

軽量化を最優先するなら、全てのスポークに最軽量のDT AEROLITE®を採用するのがベストですが、細いことによる強度不足や、弾力性に富むことが仇となって剛性不足となるリスクがあるため、バランスが重要になります。FFWDは、前輪には軽量なAEROLITE®を採用する一方、駆動力を担い、体重の多くを支える後輪にはあえてDT AERO COMP®を採用することで、このバランスを図っています。(Sapimの場合はCX-RAYとCX-SPRINTを組み合わせて使用しています。)

スポークの重さなんて大したことない、と思う方もいらっしゃるでしょう。比較的スポーク長の短いディープリム(55mm)の場合でも、エアロライトとエアロコンプの重量差は、後輪1本分の24本で約40gです。カタログの読み方が変わってしまうほどの数値ではないでしょうか?

ニップル

スポークとリムを繋いで、スポークに張力をかけている部品がニップルです。ホイールの外周部に位置するので、軽量化の恩恵が受けやすい部分であるとともに、車輪の回転に伴う移動量が大きいので、リムの内部に隠せば空気抵抗の軽減にも効果が期待できる部分です。

FFWDでは、フラッグシップモデルのRAWにDT Swiss製のPro Lock® Alloy Hidden Nippleという軽量でエアロ効果あるニップルを採用しています。ヒドゥンニップルはスポークテンション調整用の工具をかける面がリム内周部に露出しないため、回転に伴う空気の乱れを最小限に抑えることができます。また、軽量なアルミ製であるため、加速のレスポンスを向上させることができます。

「丈夫で長持ち」という文脈では、まずPro Lock®テクノロジーに注目します。ニップルが緩むと、スポークテンションの低下やバラつきが発生し、振れが出てしまうだけでなく、ホイール自体の耐久性が下がってしまいます。これを防ぐのがDTが特許を持つネジ止め加工=プロロックです。ホイールの耐久性を最大20%も向上させることで知られています。FFWDでは全てのモデルにPro Lock®ニップルを採用し、高い精度を長く維持できるようにしています。

それでも狂いが生じてしまったら…。簡単に修正できればすぐに機能を回復できます。FFWDでは、RAW以外のモデルにはあえて真鍮製のスタンダードなニップルを採用しています*。タイヤやリムテープを外さずに調整ができ、アルミ製に比べて工具をかける面が潰れにくいので、メンテナンス性に優れているからです。前後輪で15gほど重量増にはなりますが、良い道具は手を掛けながらでも長持ちさせたいという想いは、作り手にも使い手にも共通なのではないでしょうか。

*RAWのヒドゥンニップルは、タイヤ等を外す一手間がありますが、4面接触の専用工具を使うことで、アルミ製でありながら潰れにくくなっています。