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リムブレーキとカーボンの不都合な(?)関係

リムブレーキとカーボンの不都合な(?)関係

峠越えやヒルクライムは、日本のロードバイク乗りたちの間でも、とても人気があります。一方、自称 "坂バカ" じゃなくても、地形の険しい日本では、坂道を避けては通れません。軽さが武器になる登り坂では、カーボンホイールのメリットを疑う余地はありませんが、長い下り坂となると、特にリムブレーキとフルカーボンクリンチャーの組み合わせは、安全上の懸念があるのも事実。

この記事では、リムブレーキ用フルカーボンクリンチャー(チューブレス、チューブレスレディを含む)ホイールにまつわるテクノロジーと、安全に走行するための注意点をご紹介します。「フルカーボンのリムブレーキ用クリンチャーは下り坂では危険なの?」という究極の質問にもお答えします。

※本記事は、FFWD本国サイトに掲載された記事を元に、加筆、修正しています。

    フルカーボンクリンチャーについて

    カーボンホイールは、軽量性、エアロ性能、ルックスも含め、ロードサイクリストに人気があります。これらの性能はヒルクライムにも平地巡航にもメリットをもたらします。カーボンは強度や剛性に優れていながら、軽量性においても有利な素材なので、同等スペックのアルミリムと比べると、圧倒的な加速性能と登坂性能を両立させることができます。

    メリットがあれば、デメリットがあるのも事実。一般的に、カーボンホイールはアルミホイールに比べ高価で、扱い方を間違えればダメージに対してより繊細であると言えます。もちろん、アルミのリムも壊れないわけではありませんが、タイヤの空気圧がリムのブレーキ面付近に内側から加わっているところへ、ブレーキングの熱がリムに蓄積することで起きる変形や破損は、フルカーボンクリンチャー特有のダメージかもしれません。特にハイスピードからのブレーキングが求められる、峠道の長い下りでは、大きな問題となることがあります。

    素材、製法、リムの品質

    フルカーボンクリンチャーが出回り始めた15年以上前と比べると、目覚ましい技術革新が図られています。不適切な使用が原因であることが多かったとは言え、実際、初期のフルカーボンクリンチャーで問題が起きることは珍しくありませんでした。各ホイールメーカーの研究開発部門は、素材や製法の改善に取り組み続け、現在のフルカーボンクリンチャーリムに至っています。

    FFWDの初期のフルカーボンリムには、ブレーキ面の素材としてバサルト繊維を用いていました。この素材は耐熱性に優れ、制動力も向上させました。現行世代のリムブレーキ用フルカーボンクリンチャーには、熱伝導に優れるカーボンナノチューブを用いた3K-NANOブレーキ面を採用し、放熱性が改善されています。ブレーキ性能はさらに向上し、総合的なパフォーマンスアップに貢献しています。

    リムブレーキ VS ディスクブレーキ

    ディスクブレーキがロードバイクにも採用されるようになり、今や破竹の勢いで広がりを見せています。そのおかげで、リムブレーキは隅に追いやられてしまったかのようにも見えます。もうリムブレーキは終わったのでしょうか?
    とんでもない!まだ数多くの素敵なリムブレーキバイクが存在し、どんな地形で乗るにしても、それに相応しい美しいホイールがあるべきだと私たちは考えています。

    「山岳コースでフルカーボンのリムブレーキ用クリンチャーは危険なのでは?」という懸念も多くのサイクリストから聞かれますが、そんなことはありません!

    ただし、ディスクブレーキでは気にしくて済むようなことにも、注意を払う必要はあります。

    リムブレーキは文字通り、リムに制動面があります。対してディスクブレーキはハブに取り付けたローターが制動面となり、リムにはブレーキの摩擦力が加わらないので、カーボンホイールでも熱の蓄積や摩耗が問題となることはありません。これは長い下りや悪天候下において大きなメリットですが、「だからリムブレーキはダメだ」ということではありません。

    フルカーボンクリンチャーホイールで考慮すべきこと

    リムブレーキの車体を持っていて、カーボンホイールへのアップグレードをしようとインターネットで検索し始めると、必ずと言って良いほど出てくるのが、物欲も萎えるようなリム破損体験談の数々。経験者の心中を察すると言葉もありませんが、幸いなことに、こうした体験は避けることができます。リムブレーキ用フルカーボンクリンチャーの取り扱いに関して、注意事項を見ていきましょう

    熱の蓄積

    まず最初に留意しなくてはいけないのが、下り坂でのブレーキ熱の蓄積です。長く急な下り坂では、ブレーキングの時間も長くなりがちで、リムとブレーキシューの間に起きる摩擦熱は放熱が間に合わずに蓄積されて、高温になります。アルミは熱伝導に優れた素材なので、熱が広範囲に分散しやすく、冷めやすい特徴がありますが、カーボンは熱をその場に留めがちで、ブレーキをかけっぱなしにするとオーバーヒートを起こし、剥離や、変形、タイヤが外れるなどの危険な状態になることもあります。

    また、ラテックスなど、熱に弱い素材のチューブは使えません。最近、流行のTPUチューブもリムブレーキでの使用を禁止している製品がありますので、使用する製品ごとの注意事項を確認し、各メーカーの指示に従ってください。

    熱の蓄積を最小限に抑えるためには、適正速度の維持(速過ぎ、遅過ぎは共にリスクあり)と、適切なブレーキ使用が求められます。過熱を防ぐためにはこまめにブレーキレバーを戻すなどの対策が必要です。言うまでもありませんが、ブレーキが正しく調整されていること、専用ブレーキシューの使用も過熱防止には必須です。

    専用ブレーキシューの使用

    上述の通り、下り坂をリムブレーキ用フルカーボンクリンチャーで安全に走行するためには、ブレーキシューのタイプと品質が重要です。適切なタイプの高品質なブレーキシューは、リムとの間に発生する摩擦力を適正化し、その結果、熱の発生を適度に抑えることができます。不適切なタイプや、低品質なブレーキシューは、リムを傷め、ブレーキ性能も低く、危険な状況を招きます。

    ブレーキシューはカーボンリム専用のものを選びましょう。カーボンリム用ブレーキシューは、アルミリム用のものに比べ耐熱性が高く、より柔らかいコンパウンドを使用しています。そのため消耗は若干、早くなりますが、ブレーキ性能は飛躍的に向上します。

    カーボンリム用ブレーキシューは、より大きな摩擦によって確かな制動力を発揮するので、熱の蓄積を抑えつつリムの摩耗も防ぐことができます。メーカー指定(推奨)の銘柄があるならばそれを使用し、定期的に点検をして、使用限度を迎える前に交換することが肝要です。

    ウェットコンディションでの制動力低下

    リムブレーキは、雨天時などブレーキ面が濡れていると著しく制動力が低下する傾向があります。ブレーキ面の素材や表面処理、ブレーキシューの特性によって多少の差はありますが、概ねドライコンディションと比べると効きが悪くなるので、スピードを抑えて走ることになります。

    ブレーキをかけても速度が落ちにくいので、ドライの時以上に長時間のブレーキングになりがちでオーバーヒートのリスクが高まります。雨でリム温度が下がると錯覚してしまいますが、実はあまり効果がありません。

    また、流されてきた路面の汚れや砂粒などが巻き上げられて、ブレーキシューとリムの間に入り込みやすく、リムへの攻撃性が高くなりがちなのもウェット時の注意点です。

    ライディングスタイルの違い

    その気になれば、トッププロと同じ機材を使えるのがロードバイクのロマンでもありますが、平均的な一般ライダーの反応速度やテクニック、コントロールの限界、機材の整備状態は、トッププロのそれとは大きく異なることがあります。封鎖されたコースを走るプロレースとは違い、他の交通もある一般公道を走る時には、安全マージンの取り方も違います。当然、ブレーキのかけ方も、かける頻度も全く変わってきます。

    この文脈で強調したいのは、峠道をフルカーボンのリムブレーキ用クリンチャーで安全に下ること自体は可能でも、誰もが同じようにできるとは限らないということ。

    地形なりの速度でスムーズに走れる人もいれば、ブレーキに頼りきりな人もいて、その差は、フルカーボンクリンチャーの使用が可能か、アルミリムやディスクブレーキを選択するべきかの差にもなり得ます。

    また、ヒルクライムの大会などでは、軽さを重視してリムブレーキとフルカーボンホイールを選択する方も多いですが、ゴール後の下山時に速度制限が設けられていたり、先導者を抜かないように求められることが多く、自分の必要以上にブレーキをかけなくてはならない状況が発生します。イベント参加時には、帰宅するまでの全場面を想定して機材を選びましょう。

    安全に走るコツ

    リムブレーキ用フルカーボンクリンチャーホイールを使用する上で考慮すべき点を明らかにしたところで、より具体的な対策をお伝えします。繰り返しになる部分もありますが、安全に、ホイールの寿命を縮めることなく、余裕を持って乗れる上手なサイクリストを目指すためには、外せないコツです。

    ブレーキングテクニック

    リムブレーキに限らず、正しいブレーキングテクニックを身につけることは、何よりも重要です。坂道で「コントロールできる速度域に保つこと」と、「一定の速度で下ること」は、似ているようで全くの別物です。正しいテクニックは前者。下り坂での自転車は、ブレーキをかけなければ加速してしまうので、速度を一定に保つということはブレーキをかけ続けることを意味するからです。フルカーボンのリムブレーキ用クリンチャーでは、特にこのブレーキのかけっぱなしが最悪なのです。

    長い下り坂では、ブレーキを引きずりっぱなしにせず、断続的に、短く、しっかりと効かせます。ブレーキの使いすぎ、特に長時間レバーを握りっぱなしにするようなかけ方は、リムが過熱し破損につながるので、減速時以外はブレーキをリリースして、リムを冷ますことを意識しましょう(冷ますために水をかけたりするのは良くありません。リムブレーキは濡れると制動力が著しく低下しますし、急激な温度変化は剥離などの問題につながる恐れがあります)。

    やさしくブレーキをかけた方が、熱の発生も摩耗も抑えられるような気がしてしまいますが、弱い効かせ方では十分に減速できないので、結果的にブレーキをかける回数も、一回あたりの時間も増えてしまい、逆効果です。

    強くかけすぎるのも問題です。車輪がロックしてタイヤが滑るようなブレーキングは、まったくお勧めできません。

    ウェット時には路面の摩擦係数が下がるので、タイヤが滑りやすくなりますが、ロックさせないように注意しながら、しっかり、断続的にブレーキをかける必要があります。ドライ時のブレーキ開始点よりはるか手前に、最低限「リム面を覆う水の膜を切るイメージ」で1回、「リム面を乾かすイメージ」でもう1回はブレーキングを追加しましょう。

    正しいブレーキングテクニックを用いれば、スピードもバイクの挙動も完全にコントロール下に置き、ダメージのリスクを抑え、事故を防ぎ、フルカーボン クリンチャーホイールの寿命を最大化することができるでしょう。

    制限体重の尊重

    カーボンホイールメーカーの多くは制限体重を設定しています。カーボンリムの耐荷重性能は、この設定値より遥かに高いことが一般的ですが、制限体重に関しては、重量が増えるほど減速しにくくなることを加味し、下り坂でブレーキ面に発生する過度で長時間におよぶ摩擦を防ぐ目的で設定しています。制限値を超えるのは危険なので、必ず守ってください。

    慣例的に "制限体重"と表記することが多いですが、実際にはライダーの体重と、荷物や機材の重量を合計した "総重量" のことを指します。また、制限値未満であれば(無条件に)安全、という意味ではありません。それでも、スピードのコントロールに無理がなく、ホイール寿命に悪影響が少ない総重量の目安にはなるはずです。

    ブレーキシューの品質

    繰り返しになりますが、ブレーキシューはカーボン専用の高品質なものを使いましょう。と言っても、市場には怪しいものも含め様々な製品が溢れていて、品質を見極めるのは困難です。ファストフォワードのホイールには、現行モデルの付属品として採用しているSwissStop(スイスストップ)のBlack Prince(ブラックプリンス)を推奨しています。

    定期的な点検と、早めの交換も重要です。減っていたり、異物が挟まっている状態では安全な走行は望めません。十分な残量があっても、長期間乗らずにいるとゴムが劣化することもあります。

    効きが落ちている状態や、異物によってリムへの攻撃性が高くなっている状態は、リムの寿命を縮め、事故などのリスクを増大させます。

    ブレーキをかけた時に、元よりレバーが近くなったと感じたら、ブレーキシューが減っているサインかもしれません。唯一の判断基準ではありませんし、他の問題の顕れであるとも考えられるので、目視による点検(できればプロの目で)は外せません。

    メンテナンス

    点検とメンテナンスの重要性は、何度も繰り返してきましたが、ブレーキ周りだけではなく、全体の異変(ホイールであれば、振れ、クラック、摩耗など)のチェックも怠らないようにしましょう。

    定期的なクリーニング(洗車)で、ブレーキに悪影響のある汚れ(リム表面の砂や泥、油など)も取り除きましょう。チェーンなどついている余分な油分は、飛び散ってブレーキ面を汚す恐れもありますので、バイク全体をキレイに保つことはとても大事です。スプレー式のケミカルも飛散しやすいので、注意が必要です。

    リムブレーキの調整は、基本的な工具だけでできることが多く、手を出しやすいと思いがちですが、ブレーキシューの取り付けなどは、知れば知るほど簡単だとは言えなくなってくる部分だったりもします。

    カートリッジ式のブレーキシュー(金属のフネにゴムをスライドして入れるタイプ)ならゴム部分の交換は、比較的失敗が少ないですが、最初の取り付けは "分かっている" プロメカニックに任せるのが安心です。

    ブレーキの片効きや、ホイールの横振れもブレーキングの効率に関わってきます。ブレーキの片効きに関しては、ちょっとキャリパーに当たったくらいでも動いてしまうことがあるので、乗るたびに点検するのがちょうど良いと思います。また、大前提として、ホイールが真っ直ぐ入っているかも確認しておきましょう。

    結論

    「フルカーボンのリムブレーキ用クリンチャーは下り坂では危険なの?」という最初の質問の答えには、多くの要素が複雑に絡み合っています。

    FFWDのTYRO RIM BRAKEなどに関しては、上述の注意事項を守れば「大丈夫!」と自信を持って言えますが、他ブランド(またはノーブランド)の製品にまで一般化した答えは出せません。カーボンリムの品質もまたピンキリで、姿形が同じでも、中身まで同じかは分からないからです。

    カーボンホイールには下り坂でもアドバンテージになるような、軽さ、空力性能、剛性があります。一方で、熱の蓄積、変形やクラックのリスクと、ブレーキシューの性能にも影響される不確定さが、安全性に影を落としているのも事実。

    対策としては、制限体重を守り、推奨されたブレーキシューを使い、こまめな点検とメンテナンスを励行して、正しいテクニックを用いれば、リスクを最小化できることも分かっています。

    用途や技量にあっているか、カーボンホイールのメリットがリスクを上回るか、最終的に決めるのはライダー自身です。

    でも、本当にフルカーボンのリムブレーキ用クリンチャーが危険だらけなら、FFWDもラインナップに加えることはなかったでしょう。つまり、その程度には安全だということです。

    TYRO RIM BRAKE ¥168,000(製品について詳しくは画像をクリック)