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エアロの新法則、LAWテクノロジー

エアロの新法則、LAWテクノロジー

ワイドタイヤはロングライドやグラベルロードだけでなく、レースシーンでも広く求められるようになりました。このトレンドに合わせ、チューブレスレディで、ディスクブレーキ専用、ワイドタイヤに特化した新しいリム形状が必要となります。FFWDでは、25mmまでのタイヤですでに最速の名をほしいままにしていたF6Dのエアロ性能を、25〜28mmのワイドタイヤで凌駕するという目標を掲げ、ゼロから開発をスタートさせました。

新たなエアロの法となるLAWテクノロジーと、それを採用したRYOT 55の開発プロセスをご紹介します。

CFD(Computational Fluid Dynamics)

新たなリム形状の開発にあたり、まず取り組んだのはCFD解析です。CFDは、リム形状の候補となるCADデータに、コンピュータ上で再現した風を様々な角度からあて、気流の状態や抵抗の大きさを計算によって得る手法です。CFDを用いることで、比較的短時間に、膨大な数のテストを精度高く行うことができ、数ある候補の中からベストな形状を絞り込みやすくなります。最終候補となった5種類のリム形状を同時にシミュレーションし、比較検討を重ねることで、求める性能を全て兼ね備えた1つのリム形状にたどり着きました。

乱流の発生しにくい翼形状という意味を込め、Laminar Airflow Wing(=層流翼)、略してLAW(ロー:法、法則)テクノロジーと名付けました。

風洞実験

CFD解析の結果をもとにプロトタイプを制作し、次は風洞で実寸大の形状比較テストを行います。新しいリムは、F6Dで60mmあったリム高が55mmに抑えられ、ワイドタイヤに合わせて内幅、外幅ともに大きくなり、特徴的だったDARC™テクノロジーリム形状から離れて、タイヤとリムの境目がスムーズになる形を採用しました。

風洞実験の結果は計算通り!現実世界でライダーが直面する風向きのうち、最頻出の0〜10°の範囲で、前作F6Dを大幅に上回りました。平均3.6ワット、最大なんと5ワットも空気抵抗を軽減しています!


自社製品であるF6Dとの比較だけでは飽き足らず、競合他社製品との比較も決行しました。ライダーが最も長い時間にわたって受け続ける0〜10°の風に対し、Zipp、Roval、Fulcrumの同等モデルと比較して、同じ時速48.6km/hなら平均1.5〜2.7Wもエネルギーを節約できることがわかりました。

つまり、同じ速さならより楽に、同じエネルギーならさらに速く走ることができ、どんな状況でもライバルに差をつけられます。


それだけではありません。異なる速度域での効果を検証するため、風洞実験は機材の条件を変えずに3つの風速で行われました。上のグラフは48.6km/hという最も高い速度域での結果を表していますが、より遅い38.5km/hにおいては、さらに利点が大きくなることも分かっています(単位時間あたりのアドバンテージは速いほうが大きくなりますが、同じ距離を走るなら、より時間のかかる低速域のほうが小さなアドバンテージを多く重ねることができ、結果的にメリットが大きくなります)。

つまり、LAWテクノロジーのエアロ効果は、プロ選手のちぎり合いだけでなく、仲間同士で楽しく走る場面においても恩恵をもたらすということです。

 カーボンレイアップ

 エアロ効果を左右するリム形状が定まったら、今度はカーボンレイアップ(カーボンの積層計画)の策定に入ります。カーボンは、繊維そのものが持つ特性も重要ですが、その繊維をどのようにシートに加工するか、それぞれのシートをどのように重ねていくかで、最終製品の性能が大きく変わってしまいます。つまり、素材をどう料理するかがエンジニアの腕の見せ所というわけです。

いくつものサンプルをテストした結果、必要な強度と重量のバランスに優れ、見た目にも美しいカーボンレイアップにたどり着きました。

タイヤ装着テスト

リムが完成したところで、タイヤの装着テストを行います。様々なメーカー、モデル、サイズを実際に取り付け、チューブレス化の手順も確認し、適合することを確認しました。フックドリムのおかげでほとんどのタイヤブランドに対応でき、インナーチューブを併用する従来式のクリンチャータイヤも、もちろん使用可能です。

21mmに広がったリム内幅のおかげで、テストしたSchwalbe Pro One 25mmタイヤは、有効幅28.2mmを実現。重量を増やさずにワイドタイヤの恩恵を受けることができるほか、最大42mmまでのタイヤサイズに対応するため、対応できるフィールドやライドスタイルがグンと広がります。

フィールドテスト

いよいよホイールを形にして実走テストです。 ここで採用するスポークの最終決定も行います。前輪には細くて軽量なエアロスポークであるDT AEROLITE™を、後輪には同じくエアロスポークで一回り太いDT AERO COMP™を採用しました。エアロコンプは重量面では若干不利になるものの、ホイールの横剛性アップに大きく貢献してくれることが、ベンチテストからも明らかだったからです。

究極の最終テストは、FFWDのアンバサダーを務め、ウルトラサイクリストの異名をもつジャック・トンプソンによる「1週間の走行距離」の世界記録挑戦です。新しいRYOT 55は、それまでの記録を大幅に更新する、3,502kmの世界記録樹立を支えました!