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ファストフォワードのホイール製造

ファストフォワードのホイール製造

製造にかける手間隙こそが、"普通のホイール"と"最高のホイール"とを分ける

多くの人にとっては、自転車のホイールなんて、あって当たり前で、それ以上に注意を払うべき存在ではないかもしれません。でも、しばらく自転車にのめり込んで、かの有名なサイクリングウィルスに侵されてしまうと、色んなところが気になり始めます。サドルの違い、ポジションの違い、タイヤ、ホイール…あらゆる情報源を読み漁り、貪欲に知識を求めるようになります。

 

どんなホイールも、(基本的には)同じような工程で製造されます。また、どんなホイールも(基本的には)リム、ハブ、スポーク、ニップルという同じ部品で構成されます。どんなホイールも同じ要素で成立しているので、各部品の品質レベルが最終製品に与える影響が大きいことは言うまでもありません(ファストフォワード秘伝のレシピは後半に)。でも、最大の差別化要因は、目に見えない部分で、全く気づかれないことが多いのです。そう、そこにかけた時間です!

我々が誇るマスターホイールビルダーたちの技術や経験と、彼らが費やす時間こそが、他の車輪を圧倒するファストフォワードのホイール造りに、欠かせない要素なのです。部品同士を繋ぐだけでも車輪にはなります。うまくいけば、まともなホイールだってできるかもしれません。しかし、職人芸と呼ぶレベルの仕事では、そこに掛ける時間と労力の差が、"普通"と"最高"とを分けるのです。

どこにそんな手間隙をかけてるの?

ホイールを形にする上で重視しているのは、組み付けた全てのパーツが、本当にきちんと収まっていること。まず、ハブにスポークを通し、リムにスポーク位置を合わせるところまでは完全手作業で行います。ここから機械の手を借りて、ニップルを取り付け、第一段階のテンションをかけていきます。

第一段階のテンションをかけることで、ニップルがスポーク穴に対して適正な位置に収まります。ファストフォワードが手がけるカーボンリムは、スポーク穴周辺に補強のカーボンシートを追加することで、より高いスポークテンションに耐える特別仕様。さらに、組み合わせるハブとスポークパターンに合わせて、スポーク穴をドリリングしています。穴の向きを最適化すると、ニップルはハブに向かってまっすぐ引っ張られるので、リムにクラックが発生するような無理な負荷を抑えることができ、スポークの長寿命化にもつながります。

この"仮組み"とも言うべき段階で、一旦、手作業でスポークテンションを確認します。全てのスポークにかかる張力が揃っていることが、最高のホイールに仕上げる上でとても重要なでのす。

いよいよホイールは「振れ取り」の工程を担う次の機械に投入されます。

 この機械には、ホイールモデルごとに専用のプログラムが設定されており、ファストフォワードの高い品質基準を満たす、厳しい精度要求に応えます。また、スポークに負荷を掛ける"馴染みだし"機能も組み込まれいています。ご存知かもしれませんが、ホイールにライダーの入力があると、スポークが引き延ばされるような力が発生します。新品のホイールを使用し始めると、スポークにかかる負荷によって、ハブとスポークの接点や、リムとニップルの接点で部材同士の収まりが良くなることがあり、スポークがたるんだり、当初のスポークテンションが失われ、"振れ"などの狂いが生じます。製造工程で馴染みだしを行うことで、「数回乗っただけなのに、ひどく振れてしまった」といったことが起きるリスクを大幅に軽減します。

ホイールが組み上がると、別のマスターホイールビルダーが一本ずつ手作業で最終調整を行います。このホイールを購入するお客様が、やりたいこと全てに自信を持って挑めるように。

機械を使った部分でも、掛ける時間で大きな差が生まれます。実は同様の機械を用いて、もっと短時間に製造されるホイールもあるんです。シティーバイク(いわゆるママチャリ)のホイールなどがそうです。ハイエンドのカーボンホイールとは、品質基準も使われ方も、全く次元が違います。となると、製造にかかる時間も全く異なることは容易に想像がつきますよね。精度をちょっと下げれば、我々ももっと多くのホイールを製造することができます。でも、それはしたくありません! 製造に多くの時間を掛けることの価値を明確に認識し、意識的に選択しているのです。

ここに掛ける時間は、つぎ込む全ワットを推進力とスピードに変換したいスプリンターのため。

ここに掛ける時間は、石畳を跳ね回るクラシックレースの猛者のため。

ここに掛ける時間は、仲間と週末のライドを楽しんだり、山奥の峠道を旅したり、楽々とはいかないグラベルに挑みたいあなたのため。

掛けるのに値する、価値ある時間なのだと。

ファストフォワード秘伝のレシピ

 ホイールを構成する部品は、リム、ハブ、スポーク、ニップルといった具合に、どれも基本的には一緒です。ファストフォワードでは伝統的に、自らの品質基準に合致するハイエンドパーツを選択してきました。

ファストフォワードのリムは、自社で設計、開発を行い、自社基準に合わせて製造します。どこかの吊るしの商品を買ってきて、ロゴだけ貼り付けるようなことはしません。数少ないカーボンホイール専門メーカーの草分けとして、耐久性にこだわり、デカールは常にクリア塗装の下に貼り付けてきました。最近では、同じ理由でカーボン地に直接、焼き付けています。

 ハブは創業時よりDT Swissと提携し、お求めやすい価格のオリジナルハブも実現させています。DT Swissは自転車業界内でも長い歴史のある企業として知られ、ハブのクオリティーには定評があります。

定評があると言えば、スポークもDT Swiss、およびSapimから調達しています。両社とも、同等に高品質なスポークとニップルを供給してくれます。数あるラインナップの中から上位グループのスポークを、ホイールのモデルや用途に応じて選びます。時にはホイールの特性に合わせて(例えば、剛性を上げるために)複数のモデルを組み合わせることもあります。また、ニップルに関しても高いクオリティーを追求するのはもちろんですが、調整が必要になった時に頭痛のタネとなる柔らかすぎる素材は、避けるようにしています。

ファストフォワードでは、必ずしも最軽量となる素材選びを良しとはしません。ホイールの耐久性も外せない機能だからです。メンテナンス性の良さや最終的なバランスを優先するために、わずかに重量増となる選択肢を取ることもあります。

長持ちすることのメリットは、買ってすぐに感じることができませんが、「そう言えば、だいぶ長いこと使っているなぁ」と振り返る時には、その恩恵を享受していたことに気がつくことでしょう。

※この記事はFFWD本国サイトに掲載された記事を翻訳、加筆、修正したものです。