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現役プロ選手に聞く:ホイール・タイヤ

現役プロ選手に聞く:ホイール・タイヤ

2023年シーズンより愛三工業レーシングチームに加わった石上 優大 選手に、ホイールのインプレ、タイヤのセッティングなどについてお聞きしました。

チームとしてはRYOTシリーズ(33、44、55)を採用していますが、「RAWも試してみたい!」という、ご本人からのリクエストに応じて、試乗ホイールを貸し出しています。


《過去の"プロに聞く"シリーズはこちら》 

現役プロ選手に聞く《前編》:タイヤ
https://ffwdwheels.jp/blogs/hero/ask-the-pros-1

現役プロ選手に聞く《後編》:ホイール
https://ffwdwheels.jp/blogs/hero/ask-the-pros-2

プロチーム監督に聞く:ヒルクライム直前対策
https://ffwdwheels.jp/blogs/hero/ask-the-pros-3

プロチーム監督に聞く:ホイールの選び方
https://ffwdwheels.jp/blogs/hero/ask-the-pros-4

《RYOT(ライオット)コレクションページはこちら》
https://ffwdwheels.jp/collections/ryot

《RAW(ロウ)商品ページはこちら》
https://ffwdwheels.jp/collections/road/products/raw


《ホイール編》

メインはRYOT 44

まずは、使用しているホイールについて教えてください。

ほぼRYOT 44ですね。あと、このあいだTOJ(ツアー・オブ・ジャパン)とツール・ド・熊野でお借りしたRAWを使ってみました。

TOJでは登りが絡むようなステージ……軽量ホイールが欲しい場面で、他の選手がRYOT 33を投入するところにRAWを充てていたと思うんだけど…

そうですね。

RYOT33、RYOT44、RAW

33、44、RAWの違いはどう感じましたか?

RYOT 33は、いつだったか練習でちょっと使ったくらいです。RYOT 44と比べると、速いスピードのレースには向いている感じがしなかったですね、僕は。

フレームサイズとの相性とかもあると思うんで、一概には言えないですけど、33だと伸びてる感じが少ないんですよね……惰性の余韻がないっていうか。まあハイトが低いんでそういうものかもしれないですけど。

リムハイトが高い方が下りからの登り返しとかでも、減速率っていうんですかね……慣性が消えていく感じが少ないです。

ガッツリとした長い登りとかだったら33は良いのかもしれないけど、日本のレースで使うような小刻みなアップダウンみたいに、ある程度パワーかけて登るようなところだと、ちょっとでも惰性が効いている方が楽に感じることが多いです。

なるほど

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あざみラインとかだと、ものすごく減速率が大きいんで、一歩一歩がずっと漕ぎ出しみたいな感じになるコースプロフィールなんですけど、普通のレースだとパワーで押し切るような感じになるので…

勢いを活かして押せるほうが合うってことかな?

そうですね。ちゃんと惰性が乗ってきてくれる、というか転がりが乗っかってきてくれるのが44で、33は比べるとあまりそういうのが無かったんです。

何故かはわからないんですけど、そこはRAWよりも44の方が、さらに強く感じたんですよね。惰性に関してはRAWが33より強くて、44よりはちょっと弱い感じ。

へ〜!スペック的に見ても外周部に差があるから、それと符号するかな。

RYOT 44とRAWの外周部は違うんですか?

RAWとRYOT 44は基本的に同じリムなんだけど、アルミニップルと真鍮ニップルで片輪20gくらい差があるから、その重量差を感じてるのかな、と思って。

なるほど!

黒:真鍮ニップル 銀:アルミ内蔵ニップル

33と44でもリムの重量差があるから慣性の差はそういうところかな。あとはエアロの差だと思うんだけど、空気抵抗の差って体感する?

あ、それは感じます。33と44では特に、転がりの違いとエアロダイナミクス効果の違いがあると思います。RAWとRYOT 44はそこまで差はなくて、惰性の違いだけなんですけど。

そう言えば、ニップルが外に出てるか中に入ってるかって、エアロ的に効果あるんですか?

まあ、物凄い大きな違いではないかもしれないけど、高いレベルでの競争になればマージナルゲインは無視できないよね。

スポークの長さとかが変わって剛性が違ったりしないんですか?

ニップル違いで生まれるスポーク長の差で、体感できる剛性の差は出ないと思うけど、RAWは左右のスポーク本数が1:1で、RYOTは2:1だからスポークパターンもスポーク長も違うんだよね。そこでの差は感じるんじゃないかな?

あっ、だからかなぁ? なんか、縦に転がる感じっていうか……押さえつけた時にスポークの張りがあって、よじれずに前へ転がる…なんて表現したらいいのかな?

真円度が高い感じ?

そう!それです!!

その感じがRYOT 44の方がRAWよりもあって、惰性が利くっていうのも真円度が影響している気がします。

" かかり "は、どう?

僕はもがいてるほうじゃないんで、正直、" かかり "は二の次って感じなんですけど、それでも、ガンッと踏み込んだ時のレスポンスはRYOT 44の方が良い感じがします。RAWがフニャッとするとかじゃ全然ないんですけど、RYOTの方が乾いたパリッとした印象です。

これは、今までずっと考えてきたことなんですけど、クロスするところでスポーク同士がバチッと接しているホイールの方が、かかりは良い気がします。逆に、スポーク交点が開いているホイールはあまり良い印象がなかったですね。

※「真円度」=縦剛性、「かかり」=ねじり剛性と読み替えても良さそうですね。

《剛性について詳しくはこちら》
https://ffwdwheels.jp/blogs/technology/all-about-wheel-stiffness


ハブの重さ

ところで、一般的には影響が少ないって言われてるけど、ハブ重量って感じる?

今のところ、そこまでは。勾配がきつくなって、惰性も効かないような状況なら感じるかも。RAWはホイール全体が軽いのは感じますけど、ハブが軽いのか、ニップルが軽いのかまでは分からないです。

※実は選手たちが使用しているRYOTはDT 350ハブ仕様なので、RAWとの差は約180gあります(44比、ペア重量)。

僕はRAW1本でも全部のレース行けますね。RYOT 44のフィーリングも好きですけど、RAWは全体的なバランスが良いと思います。

かと言ってRYOT 44が尖っているって感じもしないし、RYOT 44も良いんで、できればRYOT 44でDT 180ハブっていう組み合わせに乗ってみたいです。

wwwそう来たか!

DT 240仕様なら試乗ホイールがあるから、今度、試してみてよ。多分、80gくらいの差なんだけど、それを選手がどこまで感じるのか興味あるし。 

ちょうど今、草場 啓吾 選手がRYOT 33のハブ違いをテスト中だから、ハブ重量については、また別の機会に掘り下げてみようかな。

フレームサイズとホイールの相性

そういえば、草場さんは僕よりワンサイズ大きいバイクなんですよ。

え?身長は…

多分同じくらいなんですけど、サドル高は草場さんの方が1cm高いんです。

で、Mサイズの草場さんは33を結構使ってて、ちょっと言い回しまでは覚えてないんですけど、44はモッサリするっていうようなことを言ってました。

でも、Sサイズを選んだ僕とか、岡本さんとか、翔太郎さんは、逆に44の方がよく転がる感じがして、そればっかり使ってます。まあ、同じサイズで譲さんは33、西尾さんは前44/後33なので、一貫しているわけじゃないですけど。

ただ、フレーム剛性の違いとか、バイクの振りやすさとかで、ホイールの感じ方に差が出る気がします。大きいサイズのフレームは直進安定性が高いから、33でも十分な伸びを感じるのかも。

なるほど、確かにそういうのはありそうだね。

※この時点ではフレームサイズが大きくなるにつれ、ホイールベース(またはフロントセンター)も大きくなる想定で話を聞いていましたが、あとでDAREのジオメトリーを分析してみると、SサイズとMサイズで差があるのは、強いて言えばトレイル量でした。バイクを左右に振った時のハンドル切れ込み量の差が、ホイールの軽快感の印象を変えてしまうのかもしれません。
 

《タイヤ編》

タイヤのセッティング

じゃあ、話題をかえて、タイヤのセッティングについても聞かせてください。
まずは使用モデルとサイズから。

Continental GP5000S TRの25をチューブレスで使ってます。

体重は?

58kgくらいです。

古座川・熊野のレースの時にみんなの空気圧を聞いて、1人だけセッティングに特徴があったから、SilcaとかSRAMの推奨空気圧計算サイトとかを使っているのかと思ったんだけど…

あ、そういうのがあるんですね。使ったことないです。

空気圧はどうやって決めてる?

僕はダンシングとかでタイヤがプヨプヨするのが嫌なんです。なんか、それだけでリズムが狂う感じがして。

なので、わりと高めが好きで、決め方としてはちょっと舗装が悪い道で走って、タイヤの跳ねが落ち着いたところにする感じです。大体、初めて使う機材なら7.5barくらいから始めて、0.25ずつ落としていく感じですね。1日じゃなくて、何日かかけて同じ場所を通るたびに調整して基準値を決めます。 

前後は荷重配分が違うので、それも意識して0.3とかの差をつけてます。

古座川国際ロード/ツール・ド・熊野における各選手のタイヤ空気圧

古座川・熊野では毎日違うセッティングだったけど、路面コンディションによって空気圧を変えてるってこと?

はい、雨だったらまあ、基準値から0.5落とすとかって感じですかね。

予想されるレース展開とかコースの特徴に合わせて変える、みたいなこともある?

いや〜、よほど下りが重要とかじゃなければ、あまり意識はしてないです。熊野は日陰の路面に苔が生えたりしていたのと、周回じゃない区間とかが設定されてたので、予想ができないから少し慎重なセッティングにしました。

空気圧を下げすぎると、タイヤがよれるじゃないですか。まあ、バイクを寝かさなければ、それでも良いのかもしれないですけど、寝かさないなら抜かなくて良いじゃんって話なんで、あまり極端に下げるのは…

リスクもあるしね。
練習の時もチューブレス?

いや、チューブドで7気圧くらい入れてます。

僕はタイヤをローテーションするんです。で、最初はチューブレスだったんですけど、1回目に外した時からチューブを入れて使っています。

ローテーションって、前後のタイヤを入れ替えるってことでしょ?
減り方が違うから、ハンドリングとかにも影響あるし、イマイチって気がするけど?

しょっちゅう入れ替えるんで、そんなに気にならないです。走っているうちに、フロントもまた丸く減ってくるんで。

実は僕、1月の終わりからタイヤ替えてないんです。

マジで!?(もう6月下旬だぜ?)距離は?

あまりちゃんと測ってないですけど、先週は6〜700km走ってるんで、まあ、1万とかになるのかなぁ。レースとか合宿とかで、練習ホイールを使わない時もあるんで、正確には分からないですけど。

GP5000って、そんなにトレッド厚くないよね?

あ〜、薄いですね。多分もう少しでケーシング出てきますw

もうええわw
ありがとうございます。


 《インタビュー後記》

タイヤの耐久性には驚きましたが 、体重、空気圧、路面状況などに加えて、加速や減速など走り方でも減り具合は変わってしまうので、耐用距離は参考にしない方が良さそうですw

トレッドが薄くなるとパンクのリスクも増えるので、こまめな点検で状態を見極め、早めの交換を心がけましょう。

個人的には、ローテーションの代わりに、前タイヤ1本につき後タイヤを2本のペースで交換するのが良いと思っています。

ホイールのインプレに関しては、プロならではの鋭い感覚で体感したことを言葉にし、頭でも考えながら製品の特性を理解しようとする姿勢に感銘を受けました。

大人の事情でカットした部分も多分にありますが、こちらもとても勉強になりました。

石上選手、ご協力ありがとうございました。

本文中の写真(2枚目、6枚目):愛三工業レーシングチーム 提供